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タイ最低賃金値上げについて

最低賃金値上げが四月より始まり一ヶ月が経過した。
それに先立ち、三月よりこの制度の理解を深めるためにジェトロ主催の
「タイの最低賃金セミナー」を始め、積極的にセミナーも開催されている。
最低賃金の値上げは、法律の規定によるものではなく、タイの労働市場が不完全な競争市場であること、
失業・インフレには無関係であることを理由に、現プアタイ党政権の政策の一つとして実施されている。
プアタイ党政権は最低賃金の定義を、生活水準に合わせた充分で適切な賃金としている。また最低賃金を決定する基準については、労働者の生活の必需性や雇用者の支払う能力にもよるとのことだ。
それでは交通費や住宅手当など、どこまでが賃金として認められ、最低賃金として計算できるのかが問題と
なる。これに関しては同じ交通費でも賃金として支払目的を示さず一定金額にして定期的に支払っているものは賃金としてみなされる
が、この金額は交通費ですと支払い目的を告げているものについては賃金には含まれないとの見解だ。
最低賃金の値上げ額だが、バンコクやパトゥンタニでは日額三〇〇バーツ、チョンブリでは二七三バーツ、最低のパヤオで二二
二バーツという数字が示されている。企業側としては最低賃金の一番安いパヤオに会社を移せばいいのではという考えも浮かぶ
が、将来的には全国一律の金額にするのが望ましいという方針もあるため、必ずしもメリットがある訳ではないようだ。
この最低賃金の値上げはもちろん企業側にも影響を及ぼす。企業側としては最低賃金の値上げにより、
コスト的な負担が増し、海外からの発注が削減されることが想定される。そのためなんとかコストを抑えようと、
労働者との間にトラブルを招いてしまうケースもある。
その為の準備としては、企業側が生産性を向上させる計画をたて、不要コストを削減すること。業務訓練で従業員の技術向
上を図るなどの対策をとる必要がある。もちろんタイの労働省としてもタイの労働者の能力向上プロジェクトを推進してバックア
ップしていく予定だ。会社側、労働者側とも賃金は最重要問題となるものなので、面倒くさがったり曖昧にしたりせず、労働組合
やタイ人従業員の代表と話し合いをもち、結果を公示することでその後の抗議行動やストライキなどのリスクを減らすことができ
る。
最後に、冒頭で政府は最低賃金の値上げが、失業やインフレに無関係といっていたが、実際タイ人従業員にとってもいいことば
かりではない。人件費の高騰による、仕事受注の削減によるリストラはもちろんのこと、飲食業の賃金値上げによる食費の高騰な
ど、タイ人の生活が必ずしも現在よりよくなる保証はどこにもない。むしろ生活が現在より苦しくなる人も多数でる可能性もあ
る。またタイにある日系企業としても、今後も人件費の上昇が見込まれる中、タイ人従業員とどう給与の折り合いをつけていくの
か、これからどのような形でタイでの事業展開をおこなっていくのかという方針転換を迫られる可能性もある。このような状況に
いつでも柔軟に対応していくために、今後とも最低賃金の値上げ政策が及ぼす影響について注視していきたい。
小田原 靖
タイ王国和僑会副代表幹事PERSONNEL CONSULTANT MANPOWER (THAILAND) CO., LTD.代表取締役
会社のwebサイト:http://personnelconsultant.co.th/
紹介ページ:https://waoje.net/db/bangkok/?p=165